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猛牛党の声②
文:猛牛党
その選手は 2014 年のドラフトで入団した。
2017 年に 100 試合に出場し、2016 年と同様チームの捕手の中 では最多の試合に出場するも、打率が夏場には1割台に低迷した。
本来は得意だった守備も 2 塁への走塁を阻止する強肩も影を潜めた。
球場に行くと「頼むから辞めてください。」といったヤジが飛んでいた。
その選手がホームランを打っても「珍しいものを見てしまった」などという観客の声を聴いた。
同じ球団のファンとして、流石にそこまで言うかと思ったものだ。
けれどそのくらいに不甲斐なかった。
チーム自体も 2017 年は4位、2018 年も4位、2019 年、2020 年は最下位に沈むという体たらくで低迷した。
その選手と同じくらい不甲斐なかった。
そういったチームなのだから仕方がないと思ったものだ。 2019 年も 2020 年も年間 5、6 試合は観戦したが、観戦に行った試合はいつも負けた。
その選手は、埼玉出身で垢抜けなく、守備は良くともチャンスで打てない。
試合前の練習でも手を抜かない、ピッチャーとのコミュニケーションも取っている ように見えた。
上手くなろうと練習しても頑張っても成績に結びつかない。エース級のピッチャーとは相性が良くなく、 バッテリーを組めないといったこともあった。
チャンスで打順が回ってくると本人も自信がない。周囲も 諦めといった雰囲気を感じたものだ。そして案の定、三振か凡打…
ところが、である。
チームは 2020 年の途中からそれまで二軍監督だった方が監督となり 試合の中盤からは諦めモードで、弱かったチームがどうしたものだろう。
2021 年からチームは、パリー グ 3 連覇、2022 年には日本シリーズでも優勝した。
その選手の打率も徐々に上がり、チャンスでも打て ることが多くなった。
チームのエースも最多勝等タイトルを 4つも 3 年連続で取り、日本一の投手と言われることも珍しくなくなった。
やがてエースは、メジャーリーグという舞台に飛び立ったが、エースとバッテリーを組んだのも その選手だった。
2025 年に、その選手は 3 度も感極まるシーンを見せてくれた。シーズン中 3 度もサヨナラ打を放ったのだ。
ベストナインを初受賞し、なんと 2026 年の WBC のメンバーに選ばれるに至った。
「努力すれば報われる」 とか 「稽古は裏切らない」といった言葉があるが、そんなにうまくいくものだろうかと思う。
周囲にそんな実例もなかったけれど、その選手を応援していたことで実例を見たのかもしれない。
WBC で活躍した日には、開けていなかった美味しい酒を飲もうと思う。